【後編】私、16歳のCEO。”これからのリーダーとわたしのこれから”


この記事は、後編であり、もし前編の「私、16歳のCEO。」〜仁禮彩香の歩みと偉大な母〜を読んでいない方は、そちらを読んでからこの章をお読みください。

第一章では、仁禮彩香さんの過去について深く聞いていった。第二章では、仁禮彩香さんの「いま」と相方の斎藤瑠夏さん(グローパスCOO)の存在について。

そして、第三章では、グローパスのCEOとしてどういうリーダーシップを発揮しているのか。また、そこにはどんな苦労があるのか。さらに、彼女の「これから」について深く聞いた。


──グローパスのCEOとして、自分自身の役割をどのように捉えていますか?

仁禮:会社での自分の役割は、グローパスとその周りにいる子どもたちがやりたいことや、できることを発信することです。代表ですから、当然わたしが人前で話すことが多いんですよ。例えば、グローパスの取材を受けたり、TedxKidsのときのようにプレゼンテーションをしたりすることですね。

それに対して、瑠夏はいつもサポートにまわってくれてるんです。グローパスの話をするときは、二人でプレゼンをすることが多いんです。

基本的には私が話していて、時に瑠夏が「こうだよね」とフォローしてくれる、っていうスタンス。瑠夏が隣にいることで安心もしますし。

でも、二人でプレゼンをする本当の理由は、べつにあるんです。もし、わたしが延々とひとりでグローパスの話をしていたら、聞く側のひとは、「これは、誰の話なのだろうか?」と思ってしまうんです。

だから、あるタイミングでさらっと瑠夏に切り替わるんです。そうすることで、無駄な重さが取り除かれて、聞き手にとってもわたしたちの話をすごく受け取りやすい印象になるんですよ。「この人たちみんなで会社を経営しているんだな」とか「わたし一人の妄想とかではなくて、グローパスの意志なんだな」と思ってもらえるんです。

わたしはプレゼンをする際に、聞いている方々をすごく意識しています。

例えば、お客さんの反応によって、話す順番を変えたり、口調を変えたり。

でも、瑠夏はそこに意識を向けるのではなく、「自分はどのタイミングで、話に入ろうかな?」とか「今日は話す分量をどれくらい彩香から引き継ごうかな?」といったことに気を使っているのだと思います。

では、この役割分担っていつされたのか?

これは、「彩香の話すパートはここ」「瑠夏の話す箇所はここね」と二人で決めたわけなく、自然と役割分担がなされていったんですよね。

それは、小さいころからずっと変わっていません。

SIS(湘南インターナショナルスクール)に通っていたときも、わたしと瑠夏の役割分担は勝手に決まっていました。

だから、わたしと瑠夏の役割分担を明確にお話することがあまり言えないんですよね。それは、その日の空気感で変わったりするものであるから。

でもひとつ言えることがあります。私たちの立ち位置は、わたしがリーダーで、瑠夏は一番私の近くにいるフォロワーということ。

そもそも、リーダーはフォロワーがいないとリーダーになれません。

例えば、わたしが「今日からわたしがリーダーね!」って叫んでも、後ろにフォロワーがいなかったら、「なんだコイツ、大丈夫か?」と思うじゃないですか(笑)。

でも、グローパスでは私がリーダーで、私の横にいてくれるフォローワーがいて、有田先生というグローパスを作ってくれた私と瑠夏の最大のフォロワーがいて、さらに、SISや家族というフォロワーもいるんです。

そして、グローパスという組織を通じて巡り会ったすべてのフォローワーがたくさんいて、グローパスは成り立っているんですよね。

もちろん、リーダーはフォロワーが必要だし、フォロワーには、そもそもフォローするひとがいなければなれない。互いにとって必要不可欠な存在、そんなそれぞれの役割をこなすのがグローパスのリーダー、フォロワーなんだと思います。

仁禮彩香さん  

 

──そのフォロワーに対して、仁禮さんはどんな背中を見せるよう心がけていますか?

仁禮:リーダーという言葉を聞くと、多くのひとは、リーダーが前を走っていて、その後ろにフォロワーがいる、そういうイメージだと思います。

もちろん、言語的にそういう意味だし、過去のリーダーを見ると、すごいカリスマがあって、その人についてゆく!という感じがあるのは確かです。

でも、そういうリーダーはいつも孤独なんですよ。

例えば、アップルを創業したスティーブ・ジョブズも、素晴らしい会社があって、能力があるひとたちに囲まれていながらも、いつもワンマンで、ひとりだけ突出していました。

ジョブズの背中についてくるひともいれば、ジョブズと対立するひとたちもたくさんいました。

でも、いまはそういうリーダーじゃなくて、新しいタイプのリーダーが必要だと思うんです。

私たちが作ろうとしているリーダーは、フォロワーの前を走るのではなく、フォローワーを支えつつ、導くひと。

導く方向性もリーダーが決めるのではなく、みんなで決めるんですよ。

わたしの頭のなかでイメージしているのは、フォロワーがみんな手をつないでいるんです。そして、フォローワーは横に横に連なっていく。そこでリーダーが、その横線が縁になるようにするんですよ。ですので、リーダーは手が長いひとだと思います。

これからのリーダー  

 

──ワンピースのルフィみたいな(笑)

仁禮:そうです(笑)。フォロワーだけだと横にしか並べませんが、リーダーがいることで、左端にいるフォロワーと右端にいるフォロワーと手を繋ぐことができるんですよ。

手が長いから(笑)そうすることで、円ができるわけです。

そういう形のリーダーがいまは必要だと思っています。

だから、いつも円になってフォロワーと顔を合わせるひとがリーダーだと思います。

 

──なるほど。背中を見せるのでなく、円を作るのがリーダー。そのリーダーを務めるうえでなにが一番大変ですか?

仁禮:うーん、これはリーダーを務めるうえで難しい事というよりも、わたしがリーダーをするからだと思うのですが…

わたしは、フォロワーの人たちそれぞれのことが本当に好きだから、その人たちの想いや願いをすべて叶えたいと思うんです。

彼らの想いや願いに、自分が順位をつけることはもちろんできません。

でも、ひとりの人間ができることって限られていますよね。わたしは一人しかいないし、フォロワーの数だけの  プロジェクトが立ち上げられるわけじゃないから、選択をしなければならない場面がこれからあると思います。

だから、もしそういうことを選ばなければならない場合は、きっと辛いだろうし、すごく大変だと思います。

でも、私たちは、選択するのではなく、全てのいいアイディアをごちゃまぜにして、またはつなげ合わせて、一つのものを作るんです。

例えば、PIFも、日本全国にばらまかれている素晴らしいアイディアやシステムを全部集めて、減災産業を作ろうということがコンセプトでした。

だから、私たちはどちらかのアイディアを優先させることはせず、そのアイディアを捨てないために、どうやったらそのアイディアと、このアイディアをつなげることができるだろう?とすごく考えます。

そして、私たちは最終的に求めているところまで、いつもたどり着けてるんですね。アイディアを捨てることなく。

そのゴールにたどり着くためには、アイディアを練ってゆく行程があり、それはすごく頭を使うし、確かに大変です。

でも、この大変さは、「はぁ…。大変だ…」ではなく、「あー、大変だなっ…!!」というニュアンスなんですよ。

もちろん体力的に自分が追いつかなくなったりすることはあるけど、大変だなって思うことも自分は、好きだし、それを乗り越える自分を見てみたいと思うんです。

だから、「大変さ」ということばをひっくるめて、自分はそれが好きなんですよね。

 

──その大変さを乗り越えた先には、どんな景色が広がっているのでしょうか?

仁禮:そこには、磨かれた自分もいるし、私が乗り越えるときに一緒に手を握ってくれていた人たちもそこにいるし、さらに私たちの姿を見て、これから私たちと一緒に歩きたいなって思ってるひとが増えるのだと思っています。

大変なことを乗り越えたあとに、「やった!乗り越えたぞー!」という達成感があるじゃないですか。

そんなことを味わっているひとたちを見ると、自分がすごく幸せになるんです。そこには、プラスのエネルギーが絶対ありますよね。

それを見たら、プラスの行動をしようと思うひとが増えると思うんですよね。

だから、なにかを乗り越えた先にあるのは、また輝きだした自分と支えてくれたひと、私たちにの周りに集まってくれたひと、そして、それを見ていて私たちとこれから何かをやろうと思ってくれた人たちが円になって笑っているのだと思います。


グローパスのファウンダーでもあり、仁禮さんや齋藤さんの師でもある有田曉生さんに、彼女たちの魅力について聞いてみた。彼女たちをずっと見守ってきた有田さんの目には仁禮さんや斎藤さんの姿がどう写っているのだろうか?

有田生暁さん

有田曉生さん

──以前、有田さんにお会いしたときに、”自分たちをプロモートしないこと、それが彼女たちの魅力であるとおっしゃっていました。プロモートしないとは、一体どういうことでしょうか?

いまの言葉ですと、主語が抜けているので、言い直すと、”彩香や瑠夏は、自分たち、およびグローパスの存在そのものをプロモートしていない”ということです。

例えば、ひとつひとつの家から減災力を高めていこうという企画、PIF。人生ゲームを通して、お互いの価値観を共有し合おうという想いであったりとか。彼女たちは、そういった自分たちの想いのプロモートをしているんです。

彩香や瑠夏は「わたしってこんなにもすごいんだよ」とは言わないし、「わたしの会社はいい会社だよ」とも言いません。ですが、「こういうことって大事だよね」とは言うんです。

──なぜ彼女たちは自分や会社をプロモートしないのでしょうか?

おそらく、あの子たちは小さいときから承認欲求が満たされた状態で育ってきたのでしょう。承認欲求が満たされていないひとほど、一生懸命自分のことを認めてほしくなるので、自己主張を懸命にしたり、自己アピールを必要以上にしたりするんです。でも、彼女たちは、自分たち自身のことよりも、自分たちがやっていることや考えていること、そういった想いを人に伝えたいのだと思います。 

──TEDxKidsでは、仁禮さんのプレゼンの際に、自分たちが用意したスライドではなく、古いスライドが映されたままプレゼンをするというハプニングがありました。そんなハプニングがあっても乗り越える力というのは、どこで育まれたのでしょうか?

問題は、いつでもあると、彩香も瑠夏も思っています。どんなときでも、なんらかの問題は絶対に存在すると受け止めているんですよ。むしろ問題がないほうがおかしい。異常事態なわけです。

例えば、災害時に使ったりするラップポンというトイレがあるのですが、それを湘南インターナショナルスクールでペインティングしたんです。

それを岩手県の大船渡に持っていって、スワロフスキーの交織に使われている素材を使って、東北の子どもたちと一緒にトイレをデコレーションしようという取り組みをつい最近行いました。

高校生CEOと子どもたちが世界を変える

ところが、わたしたちが大船渡に到着したら、そのトイレ自体が現地に届いていなかったんですよね。普通は「やばい!どうしよう?」ってなるじゃないですか?

でも、あの子たちは何事もなかったかのように「トイレ、届いてないんだー。」と言って、紙にトイレの絵を書いて、東北の子どもたちにペイントしたトイレの写真を見せながら、一緒にデザインを始めました。その後に「トイレが届いたら、後で持って行って、貼ればいいよ」と子供たちに言ってるんです。なにもストレスを感じずに、問題解決策を考えるんですよ。

それで、到着後すぐに、トイレが来ていないことの原因を調べました。

どうやら、トラブルがあり、こちらに到着していなかったようです。で、彩香に「どうする?」と聞いたら「じゃあ問題解決ですね」って言うんですよ(笑)

問題解決する際に無駄なエネルギーを使わず、ピュアに力と知恵を使うんですよね。たぶんその現象がTEDxKidsでも起きたのだと思います。


──最後に、仁禮さんのこれからについて聞かせてください。TedxKidsのプレゼンのときに、「人生ゲームのゴールは大富豪になることだけど、それはわたしの人生のゴールではない」と発言されていました。では、どういう人生の終わりを迎えたいのですか?

仁禮:そうですね。グローパスやグローパスのあとに、今後自分が続けていくことのために、すごく好きだけど、心の優先順位を下げなければならない場面がたびたび出てくると思うんですよ。例えば、わたしは年間パスポートを持っていたくらいディズニーランドにしょっちゅう行っていたし、大好きなんです。

でも、グローパスの活動がすごく忙しくなり、ほとんど行けなくなったんです。幼いときからずっと持っていたもので、わたしにとっては年間パスポートを持っていることがある意味普通だったんです。受験のときだって普通に持っていましたし。

でも、グローパスが忙しくなって、年間パスポートを今年初めて買わなくなったんです。つまり、初めて心の優先順位を下げたんです。それは他の人から見れば、どうでもいいことかもしれないけど、私にとってはすごく大きな決断だったんです。自分の心の優先順位の一番だったディズニーが下にゆき、グローパスが一番になりました。そういうことがこれから増えてゆくと思うんです。

確かにディズニーに行く機会は減りました。それは、優先順位が下になっただけのことで、ディズニーが好きなことには変わりはありません。

でも、人生の終わりにさしかかって、自分のやりたいことに満足したのであれば、今まで心の優先順位の下にあったものを全部上に戻して、ディズニーの年間パスポートを買って、ディズニーに行ったり、そういったことを満喫したいなって思ってます(笑

インタビュー・編集:馬岡祐希
写真撮影:高橋創
写真加工:佐藤宏樹

 


編集後記

 「仁禮彩香さんのインタビューを終えて」

その後の仁禮さん

【#01】Weathernews「SOLiVEムーン」に出演(2014年6月)

【#02】「Japan Indepth」ニコニコチャンネルに出演(2014年6月)

【#03】安倍昭恵氏が主宰する「UZUの学校」開校式出席(2014年7月)

【#04】女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム出席(2014年9月)

【#05】10月12日号「日経ヴェリタス」にて掲載(2014年10月)

【#06】Nicotama International School設立予定(2014年11月)